タイムライン(レッド)「PILOT」

 ペン先側を覗くと金属の筒が精工に管体内に配置されていて、あたかも銃口のような緊張感をもってこちらを睨んでいる。軸を回転するとまずペンの土台が出てきて、次にペン先自体がでるという二段の構えだ。何度繰り返しても精工で流れるようなその挙動は、滑らかで心地よい。また、半端な位置に止まると格納されるベクトルに力がかかる機構が備わっており、シャツの汚れにも安心だ。 
 特徴的なグリップのマーブルは、高級レスポールのフレイムトップのような深く奥行きのあるデザインだ。「レッド」ではあるが、ボルドー的な色で光の当たり方次第では茶色にも見える。そして、特筆すべきはそのグリップ力にある。当初、装飾性のみを重視した硬質なものであると予想していたが、十分に柔らかく非常に心地よいグリップ力を持つ、服にひっかかることもなく、世に溢れているラバーグリップが「滑らなすぎる」とさえ感じられるようになった。
 ペン軸はサラサラとした表面の軽量金属である。ロゴマークがないパイロットの文字とジャパンが並んで描いてある。非常にシックで控えめなエレガントさを纏う。
 ペン尻はクリップと一体になった輝ける金属が切れに半球形様にくり抜かれている。富士の山頂のようであり、申し分のない美しさだ。

 全体としては非常に金属的で密でソリッドで装飾的な印象を受ける。コーヒーに例えるならエスプレッソのような。にもかかわらず、グリップ力とその太さ等を勘案すると、所有するボールペンで一番握りやすいものだった。非常に高い次元で装飾と実用を実現させた奇跡のような製品なのである。ある程度の落ち着いたワークスペースと時間がある方なら、ぜひおすすめしたい逸品だ。「プロダクト」として非常に価値が高い。ポールペンとしては高額かもしれないが、それ以上に得られるものがある。

 将棋のプロは「扇子」を必ずといっていいほど対局時に持参する。それで風を作るのではなく、ただ握って開いたり閉じたりしている。その方が、集中力が高まるからだ。このポールペンにはそれに似た「センス」が備わっているように思う。