コンテナの誕生が起こした世の中への影響について、その周辺の人間模様にも注目しながら詳細に書いてあります。分厚く見えますが非常に平易な文章で書いてあるので、専門書や難解な文芸書を読むよりずっと簡単に読み切ることができるでしょう。また、流通業界の基礎知識や、付属のエピソードも豊富で、社会勉強、業界研究にも役立ちます。
本書の主題は、あくまでも有史以来の技術革新の一例として「コンテナによる輸送システム」を取り上げることにより、「技術(物理的なアイデア)」を「技術革新」に変える過程と、その苦労を著しています。コンテナは「技術」としては本書の原題通りただの「箱」でしかありません。しかし、「箱」をとてつもなく大きく頑丈にして、船も港も(世の中も)それに合わせて作り、その誕生によって既得権益を失う人々との折り合いをつけ、世界中の人々が統一規格による適正な価格で利用できることにより、コンテナによる技術革新が実現しました。つまり、「技術」と「技術革新」は実は全く別物なのです。
特に、世の中に飛び出される前の若い方々にご一読されることを強くお勧めし、僭越ながら、下記に乱文を綴らさせていただきます。
これから、あなたがどんなに素晴らしい「技術(アイデア)」を見つけたとしても、それを発見すること以上に、広めることが重要なのであり、また難しいのです。「技術性能の高さ」と「技術革新度」は全く比例しません。例として、「FeliCa」は圧倒的な性能を持ちながら世界においての電子決済のシェアとなると印象が弱い気がします。また、日本の各種電子決済がもし統一されたならたいへん便利だし、世界の覇権を握るのではないかといつも考えてしまいます。
仮に、世界のすべての宗教の神が「良い」というような絶対的に良い新技術があったとしても、合理的な価格でなければ消費者にあまねく受け入れられません。また、その採用により少しでも利益を失う可能性がある既得権益者にとっては、それは目障りでしかありません。完璧で斬新な新技術でさえも反発を免れることはありません。社会(もしかしたら特に日本の)はとても不条理です。
まず、時間に余裕のある今のうちに本書にて、超原始的な「箱」という技術がもたらした技術革新の紆余曲折について疑似体験してみてください。そして、たとえどんなに小さくとも「箱」以上の新技術を見出し(こちらは比較的簡単かもしれません)、苦難を乗り越えそれを広めて、会社を、日本を、そして世界を変えてくれたなら無上の喜びです。